土と兵隊
 映画「土と兵隊」は火野葦平の「麦と兵隊」「土と兵隊」「花と兵隊」の兵隊3部作のひとつで、昭和14年、陸軍の協力のもとで日活多摩川映画により製作されました。監督は「五人の斥候兵」の田坂具隆。管理人の中では、日本軍ものの戦争映画で最高の映画であります。当時陸軍の協力のもとで、支那大陸において大規模のロケを行い、当然のことながら、兵器、装備は全部本物、エキストラも本物の陸軍の兵隊さん、徴兵制であった当事、俳優さんも軍隊経験があるのでさながらドキュメンタリーのような印象を受けます。故に当事の陸軍、兵隊のことを映像で知るよい資料でもあると思います。ストーリーは玉井伍長率いる第二分隊14名の杭州湾上陸から嘉善城攻略までの道のりを描いたものであり、「元祖コンバット」と言っても過言ではないと思います。この映画の見所はなんといっても戦地の厳しさと分隊の団結の描写そして、兵器・装備から兵隊さん、ロケ地に至るまですべて本物の迫力であると思います。冒頭輸送船内の場面で、白布で巻かれた(潮による錆を防止するため)十一年式軽機関銃がいかにも上陸前の輸送船内といったいい味を出しています。また、上級部隊から下級部隊への命令下達等しっかりと描かれています。特に分隊の点呼で、「もし、自分(玉井伍長)が倒れたら、坂上上等兵が分隊の指揮をとれ!」というような分隊長(玉井伍長)の言葉に上陸を前にした決意を感じます。上陸後は、歩兵というだけあって本当に歩いて、歩いて、歩くんだなぁと痛感します。汗まみれ、埃まみれ、泥・泥濘、当に土と兵隊!です。兵器・装備に関しては、すべて当時の本物なので文句のつけようはありません。装備に関しては、野戦では襟の部隊番号を外している、通常の略帽の他フェルト製略帽を被った兵隊がいる、天幕を雨衣代わりに着用している、新旧水筒が混在して使用されている等、見所たくさんです。兵器に関しては小銃から、九二式歩兵砲・九二式重機関銃・十一年式軽機関銃・八九式擲弾筒の装弾・射撃等もしっかりと見られます。特に十一年式軽機関銃の5発発射する毎にホッパー部の圧桿が1段ずつ下がっていくのは感動ものです。支那の家屋の屋根瓦が機関銃の射撃でぶっ飛んでいく場面では、特殊効果なんて一般的ではなかった当時、実際に機関銃の射撃でぶっ飛ばしたんだろうなと思うとゾクゾクしちゃいますねぇ。その他、鉄条網破壊筒による鉄条網の爆破、梱包爆薬・手榴弾による敵トーチカの攻略等見所たくさんです。装備、兵器ともに資料だけでは判らないところが映像ではよく判りますが、資料だけでは判らないといえば当時の兵隊さんの動き・号令等、形に残らないものもあります。捧げ銃・担え銃等の教練、はや駆け・ほふく前進等の戦闘動作、射撃号令等たいへん参考になります。兵隊の迅速・機敏な動き、気合の入った各級指揮官の号令は本物の凄みを感じます。分隊内では分隊長を核心として、分隊全員がまとまっている事が判ります。分隊内に規律のような秩序はありますが、内地の内務班のような厳しい上下関係は無く、共に戦友という絆で結びついているのがよく判ります。以前、軍歌祭で当時実際に兵隊として従軍された方から「内地では、時には鉄拳制裁もあって上下関係は厳しかったが、戦地ではそんなことは無かった。同じ戦友として助け合っていた。」と聞いたことがあります。映画でも当にそんな感じです。そして、やっと嘉善城を攻略し明日はいよいよ嘉善入城という当にそのとき非常呼集のラッパが鳴り響き、楽しかった宴会もお開き、楽しみなドラム缶風呂もお預けとなり新たな戦場に向けて出発するという、なんとも少し皮肉な落ちが最高です・・・兵はまた進む!頼もしき我が皇軍!
 古い映画ではありますが、本物の最高の映画であると思います。DVD化され発売されているので日本軍ファンの方は是非見ていただきたいと思います。
 すべてではありませんが、戦争を題材にした最近の日本映画・ドラマがいかにクソか改めて実感します。(誹謗中傷を目的にしたものではありませんが、管理人は最近の日本戦争映画・ドラマにはかなり辛口です。戦前・戦中の時代を再現することは本当に難しいことは理解していますが、過度に誇張されたりねじ曲げられた演出、デタラメだらけの考証、まったく気合の入っていない号令・動作にはもううんざりです。そもそも、兵隊を演じるのに坊主頭でない俳優さんって演じる以前の問題ですよねーぇ・・・・・)

 「土と兵隊」、もう絶対に作れない最高の映画です。


表紙 表紙
Top Page
雑記帳 雑記帳
Notebook
inserted by FC2 system